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インタビュー for スパピープル

vol.15
下村 朱美  スパ・ゲストハウス代表
〜誰もが安心して通えるスパ・エステをつくりたい〜(1)

今回はスパ・ゲストハウスを運営する株式会社シェイプアップハウスの代表取締役、下村朱美さんです。
下村さんは1982年、大阪にエステティックサロンの1号店をオープン。1986年には、日本初の男のエステ「ダンディハウス」もオープンします。「お客さまの喜ぶすべてのことをやろう」をスローガンに、現在、女性専用エステティックサロン「ミスパリ」、男性専用エステティックサロン「ダンディハウス」、究極のリラクゼーションスペース「スパ・ゲストハウス」を全国に展開しています。さらに人材育成のための「ミスパリ エステティックスクール」も運営されていて、まさに総合健康サポート企業を目指す女性起業家です。

スパ・エステティック業界では世界初となる「世界優秀女性起業家賞」受賞

― 下村さんは2005年に、スパ・エステティック業界では世界で初めて「世界優秀女性起業家賞」を受賞されました。そのときのご感想をお聞かせください。

世界優秀女性起業家賞は、ザ・スターグループというアメリカの非営利団体が、1997年から毎年世界各国からトップの女性起業家を選んで表彰しています。

今までに日本からは、ファッションデザイナーの森英恵さんや講談社の野間佐和子さんなど、名だたる女性経営者が受賞されてきています。私が受賞した2005年はIT関係の起業家の受賞多かったようです。また、それまではバカラやワインなどものづくりの企業が多かったので、スパ・エステティックのようなサービス業は初めてということでびっくりされました。また日本のようにチェーン店化されたエステティックは欧米にはなかったので珍しく思われました。

スパ・エステティック業界で初、ということでスパ・エステ業界全体が表彰されと思っていますが、会社として“お客さまの喜ぶすべてのことをやろう”とお客さまをまっすぐ、一生懸命見てきたことが結果として評価されて大変うれしく、名誉なことだと思います。

― エステティックはフランスなど欧米のほうが歴史もありますが、日本の起業家が世界で初めて受賞したということは、本当にすごいことだと思います。

創業者であること、毎年成長を続けていること、売り上げ20億円以上などの条件がありますので、フランスなどの企業は、歴史はあっても事業規模が小さいところが多いのです。

― 受賞するためにはある程度の事業規模が必要なのですね。現在従業員数は何名いらっしゃるのですか?

正社員が800名で、ほとんどがエステティシャンです。12〜13年前から新卒しか採用していません。わたしたちが考えるエステティックを提供できる人材は、一から育成したほうが早いからです。

エステティックサロンはお客さまが綺麗になったり、健康になったり、癒されたりする場所ですが、ただ技術を提供すればいいかというとそうではありません。外から綺麗にすることは技術でできますが、中からも綺麗にしたいとなると、食べ物や健康面での指導をしなければなりません。さらに、やさしい気持ちになったり、幸せな気持ちになったりすることが人を綺麗にしていきますから、心に触れて、綺麗に導くことも必要です。お客さまをちゃんと指導でき、幸せな気持ちにできるエステティシャンが欲しいのです。技術と指導と高度な接客、つまりホスピタリティ溢れる接客ができるエステティシャンがミスパリ、ダンディハウスのエステティシャンと考えています。

社員の採用もお客さまが喜んでくれるかどうかが基準

― どんな学部出身の方がエステティシャンになるのでしょうか?

さまざまです。管理栄養士の資格をもっている人もいますし、体育学部の卒業生もいます。文学部などの文科系学部を卒業した方もたくさんいます。

スパ・ゲストハウスは外国人のお客さまも多いので、ほとんどのスタッフが英語をしゃべれます。体調管理や、温度管理、マッサージの強さなどきめこまかなコミュニケーションが必要ですから、英語だけでなく、フランス語、スペイン語がしゃべれるスタッフもいます。

当社の場合お客さまの年齢層が他のサロンより高く、30〜50代の、時間的にも経済的にも豊かなお客さま方たちがたくさんいらしてくださいます。豊かなサービスになれていらっしゃるお客さまたちが違和感なく服を脱げる相手である必要があります。教養も必要ですし、プロでなくては勘違いされてしまいます。

わたしたちは「美しく聡明で品格あるエステティシャン」というのを理想として掲げておりますので、そうなれるような素地をもった方たちに入社してもらい、それを身につけてもらいます。今年は4000人が面接を受け、そのうち300人を採用しました。

― すごい倍率ですね。そうすると本当に優秀な方が残っていくのですね。

社員を採用するときにいつも考えるのは、この人が入ったらお客さまが喜んでくださるかどうかということです。接客業ですので、ぱっとみて、感じのいい人だな、と思われることが大切です。毎年お客さまは入社式にも出てくださいます。お客さまが祝辞でエールを送ってくださるのです。

当社は、10年、20年と通ってくださるお客さまをたくさん持っているということが特徴です。お客さまも、自分たちが居心地いいようにエステティシャンを教育し、エステティシャンも、すばらしいお客さまのために、自分の成長も楽しみにしてもらえるようにと勉強する人たちがとても多いのです。いい循環で、いいお客さまといい社員たちが、お互いに信頼しあいながらやっていっています。創業して26年たちますが、知らない間にできあがってきた風土だと思います。

― エステティシャンも長く勤められるのでしょうか?

20年くらい勤めてくれている人も数人いますし、15年以上の人はたくさんいます。離職率は銀行より低いのですよ。結婚、出産などで一時的に離れる人もいますが、5年、10年後に戻ってくる人もいますから、パートでしかできなくても帰ってきてくれますのでうれしいです。一番喜ぶのはお客さまたちです。お客さまから一番言われるのは、社員を異動させないでくれ、ということです。エステティシャンの異動が極力少なくなるよう努力しています。

理論がわかればもっとよいサロンができる、と思い事業をスタート

― エステティシャンにとっても働きやすい環境なのですね。下村さんはなぜこのスパ・エステ事業を始められたのですか?

私が24歳の時に、あるエステティックサロンに通いました。そこのエステティシャン達は本当に働き者で、額に汗をかきながら揉み出しをしてくれたりマッサージをしてくれたり。彼女たちに出会って、人のためにこんなに一生懸命になれる若い人がいるんだと、すごく感動しました。

でも「下村様このビタミンEがいいですよ」と薦めるので「なぜいいの?」と質問すると、ただ「痩せますよ」と。「下村様、このマッサージがいいですよ」「なぜいいの?」とたずねてもまた「痩せますよ」という答えです。それを見ていたら、そこのエステティシャンたちが、かわいそうに なってきて、この人達は私を一生懸命綺麗にしたいと思っているのに知識がない、どうしたら綺麗になれるのかということが教えられていない、と気づきました。こんなに人のことに一生懸命になれる“エステティシャン”という職業の人がいてくれる、このエステティシャンたちがもっと勉強して理論がわかれば仕事が楽しくなるのにな、お客さまも、なぜこの化粧品を使っているのか、なぜこの技術をしているのか、そうすることによってどうなっていくのか、なぜっていうのがわかれば不安なくついていける。そういう理論が分かるサロンがあったら素晴らしいな、と思い、当時まだ日本にはそういうところがありませんでしたから、正義感に燃えて作ってしまいました。

でも当時はお金もありませんでしたから10年ぐらい誰も使ってなかったような汚い倉庫を借りてそこからスタートしました。良いお客さまに恵まれて、今までやってこれたと思っています。

とてもいいエステティシャンに会えたのもよかったと思います。人を感動させる力のあるエステティシャンに、知恵を与えてあげればお客さまの期待にちゃんとこたえられる仕事ができるようになる。当時はエステティシャンもすぐやめてしまうので、やめたくなくなるようにするには、お客さまから尊敬されて、頼りにされれば、一生続けられるだろうと思ったのです。そんなエステティシャンをつくってあげたいと思いましたから、最初から教育のシェイプアップハウスといわれるくらい、ガンガンに教えていました。ずっと勉強会でした。休みの日も家に店長たちを呼んでコタツを囲んで勉強会。月に何回かは合同レッスンという日々でした。

― 下村さんご自身はどんなお勉強をされたのでしょうか?

当時東京に2週間の学校があって、そこに行って勉強し、その後もアロマテラピーや、痩身などの特別な勉強をそれぞれの学校でしました。アメリカにも勉強に行きました。わたし自身もいくら使ったかわからないくらいずっと勉強していました。わからないのが嫌なんです。ちゃんと物事がすっきりできないと満足できないのです。お客さまひとりひとりはたった一人しかいないとても大切な存在ですから、中途半端な考えで大切なお客さまを触ることはできませんので、自分が納得できるまで勉強しました。

皮膚科学から接遇マナーまで、美しく聡明で品格あるエステティシャンを育てる

― ミスパリ エステティック スクールなど、人材育成事業のコンセプト、事業展開についてお聞かせください。

1990年にミスパリ エステティックスクールを開校しました。当時はエステティシャンがお金を出して勉強をするなんてあまり思ってもいない時代で、期間も1週間や10日くらいの講習が普通の時代でした。そこにいきなり3か月のコースで開校しました。

今は、全国に7校のミスパリ エステティックスクールと、今年の4月に大阪と名古屋のスクールが学校法人 ミスパリ学園の専門学校として正式にスタートしました。2年間で2085時間、エステティック単独を学ぶ学校としては最長の長さです。エステティックの技術はもちろん、皮膚科学や化粧品学といった美容の知識から、お花や接遇マナー講座、サロンで使える英会話、美しい話し方まで学び、美しく聡明で品格あるエステティシャンを育てます。

人の心や体に触れるたびに、エステティシャンという仕事は、技術はできて当たり前で、美容に対する知識が深くて当たり前だと思うようになりました。お客さまを大事に思いプロとして接客をしていくことでエステティックのファンは増えていきます。エステティシャンたちの努力が報われて、海外のようにエステティシャンの地位も上がればこれほどうれしいことはありません。

来年の9月からは統一資格試験制度が始まりますが、必要な学習時間は300時間(3ヶ月程度)です。300時間ではほんとうにさわりだけで、その人たちがサロンに就職して成功しているかというと、ちょっと難しいです。1000時間勉強した人たちは、サロンに行っても手つきがいいとか、礼儀を心得ているとか、準備や片付けも教わっているとか、ひっぱりだこです。2000時間を越えるコースを修了した人はため息がでるような技術をします。こんなに違うのか、というのは教育をみてきてまざまざとわかります。長く勉強すればいいというものでもないですが、医者や薬剤師は6年勉強しますから、人の身体と心にタッチする仕事ですので、エステティシャンも2年くらいみっちりと勉強したほうがよいのです。

一番大切なことは、お客さまが必要としてくださるかということなんです。サロンに行ったら身体の調子が違うな、皮膚の調子が違うな、気分的にも違うなと感じて、また行きたいと思っていただかないといけない。エステティックやスパが自分の身体や心にとって、とても必要なものだと思ってくださって、月に1回でも行こうかと思ってくださるようなエステティックサロン、スパになりたいなと思います。

そういうサロンになるには、設備などもあるでしょうけれども、お客さまが接するエステティシャンの比重はとても高いので、エステティシャンの質を上げるということがとても大切なことだと思います。あのエステティシャンに会いたいなと思っていただけることが重要です。

― 毎年何人卒業されるのですか?

全国9箇所にある学校をあわせると、毎年700人弱が卒業します。大阪と名古屋を学校法人にして、エステティックの専門学校にしたのは、エステティックを公にしたかったからです。一時期エステティックのバッシングがありましたが、ほとんどのエステティシャンは素直で、お客さまにきれいになってほしいと思って働いている人たちです。一部の心無い人のためにエステティシャンが悪いことをしているように思われるのが嫌で、エステティックの専門学校をつくって、公の存在にすることで、みなさんが美容室に行くように普通にエステティックに行けるようになればいいと思います。

わたしはエステティシャンに感動してこの事業をはじめましたので、エステティシャンを応援する意味でNPO法人ソワンエステティック協会をつくりました。広く一般のお客さまが安心してエステティックに通えるように、エステティック業界が健全に発展するように活動する協会ですが、一方で、エステティシャンにエールを送る協会にしたいと考えていまして、毎年さまざまな資格をとったエステティシャンたちを表彰しています。表彰することを通して、日本のエステティシャンたちが勉強する習慣を身につけてくれたらいいと思っています。

これは私の経験から来ています。世界優秀女性起業家賞をいただいたときに、初めて褒めていただいて、本当にうれしかったのです。それまでお客さま以外は誰も褒めてくれなかったので、表彰していただいたことで、自分がやってきたことは間違っていなかったと思えました。それで、日本に帰ってエステティシャンたちを褒めてあげようと思ったのです。それによっていいエステティシャンが育っていけばいいなと思います。

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